劣化する日本という国

  最近いろいろな分野で日本の劣化が現れているようだ。産業界では数年来続いている東芝のゴタゴタ劇以外でも、三菱自動車の軽自動車の燃費試験の不正、日産自動車の無資格者の完成検査、さらに今回は神戸製鋼所の検査データを改ざん、とモノづくり日本はどこかへ行ってしまったようだ。

  最近発表された、英国専門誌による大学の世界ランキングでも日本の大学の落ち込みは大きい。ランクを上げたのは京都大学(91位→74位)と大阪大学(251-300位→201-250位)の2校のみ。その他は東京大学(39位→46位)を始めとして、順位を落としているか変わらずである。アジアのトップはシンガポール国立大学(24位→22位)で、東京大学より上位には中国と香港の大学が各2校前回より順位を上げて入っている。

  政治の世界でも劣化が進んでいるように思える。安倍さんが2回目の首相になってから5年弱。議論のできないこの首相の下、安倍さんのやりたい政策実現の為に、徹底して議論を避け、人事で実現するという、議会制民主主義に反するようなことを繰り返してきた。集団的自衛権実現の為に内閣法制局長官を代え、経済政策の為に金融政策を思い通りにしたい為に日銀総裁を代え、自分に対する批判報道を極力抑える為にNHK会長を代え、自分の主義主張を通してきた。

  議論が出来ない安倍さんのやりたいことは、必要性があるからということではなく、観念的に思っているだけだから、なぜ、とか、どうして、とかいう論理的な組み立てがない。だから、議論になるとすぐに底が見えてしまうのだろう。ちゃんと考える、という過程がない自分の思考回路が普通だと思っている安倍さんは、議論をしてそこから結論を導き出す、という議会制民主主義の基本を理解しているのだろうか。

  何の為かわからない衆議院議員選挙が公示されて中盤に差し掛かっている。報道によれば自公政権が大勝しそうだという。このままでは安倍政権がしばらく続きそうな気配。この後も安倍さんは情報は非公開、自分の意に沿わない人物は遠ざける、お友達は優遇する、という政治姿勢を続けるのだろう。選挙に勝てば、まさに白地小切手をもらったことにして、好き勝手なことをするのだろう。それにお墨付きを与える選挙結果になってはいけないと思う。その為には出来るだけ多くの人が投票に行くことだと思う。

  自公政権の中で、物事をきちっと考える勢力が出てくるのは期待薄である。何も考えないで従っていく方が楽だから、今のままなら議員の身分が保てるから、敢えて波風を立てなくても、とかさまざまな理由をつけて、議員がちゃんとものを考えなくなってしまっている。目には見えないところで、日本の政治の世界はどんどん劣化しているのだろう。

目的と手段

  上野動物園のパンダの赤ちゃんに香香(シャンシャン)という名前が付いたという。まだ未公開だが、公開されたらぜひ見たい。だが上野動物園にはどうやって行くのか。首都圏の方でも上野動物園に行く方法は何通りかあるだろう。その中から上野動物園に行く為に、自分に合った移動手段を選ぶことになる。目的達成のための手段である。

  近頃はこの目的が曖昧なまま、手段が目的化しているようなことが多い。衆議院議員選挙が近づいて、民進党は空中分解してしまい、その多くが政策も理念も違うはずの希望の党の公認候補として出馬するようだ。自分の目指す社会があり、政策を通して実現する為に政治家になった筈である。それが、政策も理念も違う政党に移って選挙での当選を目指す。当選することが目的になってしまい、何をしたいのかわからくなった。

  一方、自民党が公約を発表したが、本来選挙公約は選挙で勝って実施したい政策。政策実施のために選挙に勝つ、ということの筈である。しかし、これまでの安倍政権下の選挙戦を見てみると、選挙公約はあくまでも選挙に勝つための手段で、勝った後で真剣に取り組んだ様子は見られない。次々と目先を変えた新しい政策は出すものの、前の政策がどうなったか検証された形跡は見られない。最もいい加減なのは、消費税の取り扱いである。公約は選挙の時の国民との約束である。それをいとも簡単に、新しい考え方にした、とか、使途を変えることにした、だから選挙だ、と言われては、選挙公約が選挙に勝つための手段のであり、選挙に勝っても実施するとは限らない。次の選挙の時にはまた考えが変わるかもしれないから、と言っているのと同じだ。

  何のための選挙かわからないまま突入した今回の選挙。こんな選挙の為に何百億円かの税金が使われるかと思うと、腹立たしい限りである。今回の選挙でも危機的国家財政をどうするのか、政策や公約で述べている政党はない。すべて消費税引上げ凍結か、増収となった分を新たな財源が出来た、とばかりにバラマキに使うことばかり考えている。支出を減らすことも真剣に考えず、耳障りのいいことばかり並べていて、本当にこんなことで良いのだろうか。実現したい社会はどうやって実現するのか。どんな将来の立派な夢も、先送りされた借金で無残にも破れることになる。

  今の政治家には夢はあっても具体的な社会像のイメージがないのではないか。目的がはっきりしていないから、目的を達成する為の手段が具体的に出てこない。従って、その手前の段階の、選挙に勝って権力を手にしたい、ということが目的になってしまっているのではないだろうか。選挙に勝ってとりあえず自分のやりたいことをやる。後はどうなろうと自分には関係ない。次世代及び将来世代の諸君、後始末はよろしく、では困るのである。

アベノミクスって何?

  自民党の公約で「アベノミクス加速によるデフレ脱却」を謳っているが、何かというとアベノミクスを加速すると言うが、何をどうするのか、は聞いたことがない。結局、アベノミクスとは前例のない程の金融緩和、ということなのだろう。

  日本経済はこの異常なまでの金融緩和で、数年後には危機的状況になるかもしれない。現在の金融緩和の方法は、日本銀行が市場から大量に、国債の買入れ、ETF(上場投資信託)による株式の買入れ、REIT(不動産投資信託)の買入れを行って、日銀券(お札)を市場に大量に流しているのである。日銀が国債の大量買入れで金利を0%程度に抑え込んでいるから、国債金利負担も軽く、国の財政再建に真剣に取り組もうとしない。消費税増税を延期したり、借金の返済をしないで、バラマキに使おうとする。また、日銀の株式の購入により株式市場は健全な株価になっているか疑わしい。株式市場には、更に年金資金も注込んで株価維持に貢献しているようだ。その上、日銀のREITの購入だけではないだろうが、不動産価格は都心などではバブル期を超えたという。

  こうした中で潤っているのは、個人は株式や不動産を持っている層には限られ、金利が下がって円安誘導された恩恵を受けた輸出企業という感じだろう。経済好調と言われても、数字的には確かに良くなっているだろうが、一般庶民には縁遠いという感じである。この先、日銀の買える国債が少なくなり、思い通りに買えなくなった時にどうなるのか、更に株式市場でも、東証一部上場企業の半数近くの大株主が日銀、年金になっている現状から、更に株式を買い進めていくと、いずれ事実上市場が機能しなくなってしまう事態になるだろう。不動産でも、バブルが弾けて買い手は日銀だけ、という事態にならないとは限らない。

  また、本当にデフレから脱却できた時には、日銀は金融緩和を止めなければならなくなる。その時には国債の買い手はいなくなり、更に売り手に回ることになる。その時には金利は上昇し、国家財政は大きな金利負担が発生するが、どうするのだろう。株式も不動産も日銀は買い手から売り手に回ることになる。株価は下がり、年金資産も減り、不動産価格下がり、経済は危機的状況になるのではないか。

  今の政権は金融緩和の出口戦略なんて考えていないようだ。日銀が考えること、と言い逃れするかもしれない。しかし、今の日銀に政策決定の自由はない。いま日銀が金融緩和から出口戦略を検討することはないのである。日銀の政策委員は安倍さんの選んだ方々で、安倍さんの考え方に沿う方々だからである。しかし、何かあってもこの方たちが何らかの責任を負うことはないだろう。現に、今の政策委員の中で、就任した時、2年で消費者物価を2%上昇させる。出来なければ即刻辞任する、と公言した方がいたが、いまだに政策委員として居座っていられるのだから。

  選挙でいくら不人気になろうとも、財政再建に真剣に取り組む姿勢を示すことも将来の日本の安全の為には必要なことではないかと思うが。

理由なき解散総選挙

  安倍首相が正式に衆議院の解散をすると表明したが、理由なき自己都合解散であることがはっきりした。

  消費税の使途変更と北朝鮮情勢を解散理由としたが、本筋である憲法改正については記者会見では触れず、記者会見後のNHK番組の中で触れただけである。相変わらず憲法改正について正々堂々と国民に問いかける気はないようである。何で自分の口で、今の憲法の何がいけないのか、どう変えたいのか、ということをきちんと説明できないのだろうか。憲法改正を主たる解散理由とはせず公約でちょっと触れるだけにし、主たる争点にもしないでおいて、選挙が終われば改憲の賛意を受けた、と言い張ることだろう。

  これまでも、選挙では敢えて争点としないで、選挙後に信任されたと一気に強行成立させた、特定秘密法、解釈改憲による集団的自衛権の容認とそれに基づく安保法制、そして、共謀罪。これら与野党対決、国民世論も割れていた法案については、どの選挙でも主たる争点になったことがない。争点にならなかった、というより、敢えて選挙の争点化を避けてきた。今回も同じことを考えているのだろうか。何度も同じ轍を踏む国民も、もしかしたら安倍さんに見くびられているのだろう。安倍さんが二匹目のどじょう、ならぬ四匹目のどじょうを狙っていることは間違いない。今度の選挙、国民が試される選挙ともいえそうだ。

  安倍さんにとっての憲法改正は、いかなる手段をとっても成し遂げたい最重要課題の筈である。ここで選挙に勝てばあと4年の時間が稼げる。その間には目的達成できるだろう、との目論見なのだろう。何をおいても憲法改正を最優先する姿勢は困ったものである。

安倍首相による自己都合解散

  安倍首相が記者会見で正式に28日に召集される臨時国会冒頭で衆議院の解散をすると表明した。解散理由は後付けであることが見え見えで、安倍さんの自己都合解散であることがはっきりした。

  消費税に使途変更と北朝鮮情勢を解散理由に挙げたが、これは解散理由にはならないだろう。「消費税増税後の増収分(5兆円)の使途を、一部社会保障の充実(1兆円)に、残りを借金の返済(4兆円)に充てる」から、「一部社会保障の充実(1兆円)に、幼児教育の無償化と高等教育の一部無償化(2兆円)に、残りを借金の返済(2兆円)に充てる」に変更するという。今まで消費税の使途についての議論など、あの3党合意以降聞いたことがない。唐突に何を選挙によって問おうとしているのか全く意味不明である。※( )内は見込み額

  借金の返済を減らせば、財政再建に向けた政府の取り組みの変更である。国際公約の20年度までの基礎的財政収支の黒字化は達成は困難となると認めたが、黒字化の達成時期についてはこれから計算するという。20年度の黒字化自体、もともと達成困難と言われていたから、これも内容のすり替えで切り抜けようとしている。しかも、将来世代に負担を残さないため消費税の使途を変更して財源を確保する、とした。しかし、使途変更により借金の返済が減ればその分の借金が積み上がることになり、結局幼児教育等の費用を将来世代に負担させるのと同じことになる。

  消費税の増税分の使途を借金の返済以外に振り向けるということは、どんな有益な費用項目であったとしても、見かけ上消費税で賄っているようでも、実質借金で賄うことなのである。従って、これは予算編成上の問題であり解散の理由にはなり得ないであろう。

  北朝鮮情勢についても、何が解散理由なのか全く意味不明のことを言っていた。北朝鮮情勢が国難だから国難突破解散だ、とか言っていたが、何が国難だかよくわからない。危機感を煽ってそれに酔っているのではないか、と思われるくらいである。国難は北朝鮮ではなく、国内にありそうだ。

自分のための衆議院解散?

  安倍首相が9月28日に召集される臨時国会の冒頭で衆議院解散するという。何のための解散かは分からない。今選挙をして国民の声を聴かなければならないような重要な問題は生じていない。にも拘らず衆議院を解散して選挙をするというのは、党利党略というより、安倍さんの私利私欲の為、ということだろう。いずれ、いわゆる選挙の大義というものが発表されるのだろうが、それは結局本音隠しの、選挙で票を集めるためのばらまき政策か、たんなるリップサービスに過ぎないだろう。

  安倍さんが今選挙をしたい理由は、巷間言われているように、一に民進党や小池新党の体制が整わない内の選挙なら少なくとも負はない。二に臨時国会の審議が始まる前に解散してしまえば、通常国会で時間切れになり、その後は休会中審査だけで実質審議拒否してきた、森友問題・加計問題・自衛隊日報問題での追求から逃れられる。更に現議員の残り任期が1年少々の期間内という理由で、安倍さんが目指す憲法改正に慎重姿勢の公明党の方針転換を図る。更に、この選挙で負けなければ、来秋の自民党総裁再選の道筋ができる、ということまで考えているかもしれない。

  いずれにしても、今回の解散の動機は自らの保身と政権の延命という極めて不純なものであり、国政を私利私欲のために使うという点においては、森友・加計問題と同質である。結局のところ安倍さんには憲法改正しか頭になく、目的の為には手段を選ばず、という極めて短絡的な考えしかないのだろうか。利用できるものは何でも利用する、という視点で国政を取り仕切るようでは、政治家としてどうなのだろう。

  更に、疑惑が表沙汰になると、丁寧に説明すると何回言ったことか。しかし丁寧な説明は一度たりとも聞いたことがない。言いっ放しでその後は知らん顔でやり過ごす。国民は舐められたものである。しかし、舐められても反発できない国民だと見抜かれてしまっているようでもある。疑惑隠しの衆議院解散で何事もなかったかのように済ましてしまって良いのだろうか。

安倍首相の外交とは

  北朝鮮の動きが最近激しくなっている。ICBMの発射。これに対し国連安保理が、経済制裁決議を採択。この後、中距離弾道ミサイルの発射。水爆とみられる核実験の実施。これに対し国連安保理が新たな経済制裁決議を採択。これに反発し、更なる中距離弾道ミサイルの発射、と続いている。

  日本は米国、韓国と歩調を合わせ、経済制裁決議が採択されるように積極的に動いている。日本は対北朝鮮では米国主導の経済制裁以外に対応は持ち合わせていないようだ。しかし、断交や制裁が相手国の方針変更につながった例はほとんどないという。制裁がだめなら武力攻撃か、となるが、今や武力行使は全面戦争につながりかねない。残るは、話し合いによる外交努力ということになる。

  情勢が緊迫している中、決まっていた外交日程とはいえ、経済をテコに安全保障面で結びつきを強める目的もあり、インドを訪問した。経済面では、新幹線の売り込みも不調、原発の輸出も進展なし。その一方で、北朝鮮による核・ミサイル開発を阻止するため、国連安全保障理事会の制裁決議履行が重要だとの認識で一致した、という。核不拡散条約(NPT)非加盟のインドは実質的に核保有国である。いわば、北朝鮮と同じ立場なのである。そのインドに北朝鮮制裁の同調を求めるとは。

  また、経済制裁に消極的なロシアに対しては、プーチン大統領と親しいと思っているからだろうか、ロシア極東で開かれた経済会議の後の首脳会談で、厳しい追加制裁に同調するよう協力を求めた。プーチン大統領からは良い返事はもらえなかったが、同じく制裁に消極的な中国に対しては安倍さんの積極的な動きは見られない。

  安倍外交の考え方に一貫性があるのだろうか。というより、どういう外交をしようとしているのかわからない。わかるのは、ただ米国の言うことには追随している。米国が急に方針変更したら、おそらく付いていけず、取り残されることになるのだろう。その場しのぎではなく、日本の外交はこうなのだ、というものを見せて欲しいものである。