簡単に前言を翻す総理大臣

 先ごろ安倍首相は「子育て安心プラン」という新しい待機児童対策計画を公表した。待機児童をゼロにする目標を今年度末から3年遅らせて2020年度末にするという。安倍さんは、この種の話をさらっと何事もないかのように話す。しかし、これは13年に、政府が「待機児童解消加速化プラン」と称して17年度末までに待機児童ゼロすると宣言した、政権の公約といえるものだ。つまり、政府の基本方針が達成できなくなったので、修正を余儀なくされた、ということなのだ。達成できなかったことに対する国民へのおわびも、なぜ達成できなかったのか、の説明もなかったようだ。しかも、この新計画で、今度こそ終止符を打つ、と強調したという。前回の計画が達成できなかったのに、新しい計画ではなぜできると言い切れるのだろうか。前回の失敗の分析はきちんとできているのだろうか。

  こうした、重要な方針の修正を、言い換えによって、何事もないかのようにやり過ごしてしまう手法は今回が初めてではない。2014年に消費税については「再び延期することはない。そう断言する。景気判断条項を付すことなく確実に実施する」とまで言って、衆議院解散した。ところが、昨年、G7で他の首脳から冷笑された「世界経済の不透明感」を持ち出して『これまでの約束と異なる新しい判断』ということで、更に2年半延期すると表明した。この時も、断言した消費税の実施を延期する、という約束違反の、国民に対する謝罪はなかった。当然、正確な世界経済の分析による説明もなく、その後の参議院議員選挙対策であろうことは、G7首脳でなくともわかったことである。

  更に、安倍政権の看板政策である3本の矢も、アベノミクスが思うような成果を上げないと見るや、アベノミクスは第2ステージに入ったとして、新しい3本の矢を打ち出した。これも、もともとデフレからの脱却という目標を掲げてスタートした3本の矢であるが、デフレ脱却はもう目の前だ、として新3本の矢を打ち出した。当初の3本の矢の総括は終わっていないし、する気があるのかどうか。更に、いまだデフレから脱却した、と政府ですら発表できない状況である。

  このように、国の基本的な方向を決める施策にもかかわらず、都合が悪くなると簡単に言い換えで前言を翻してしまう安倍さんは、言葉の重みとか、大切さ、というものをどう考えているのだろうか。政策を実現するために真摯に取り組む、というより駄目なら言葉でかわそう、という姿勢なのだろうか。国政を預かる身であり、国政の方針等の重要な発言であるにもかかわらず、である。これでは、安倍さんには言葉で何をどう言われても信用できない。政治家の命ともいうべき言葉を、こうも簡単に、ないがしろにするようでは、首相どころか、政治家としてどうなんだろう、と思うのだが。