丁寧な議論をしてほしい安倍首相

  またか、と思わせる今国会。まだ国会に上程されていない「働き方改革関連法案」だが、その法案のいい加減さが露呈してしまった。そもそもこの法案は8つの法案の改正案を束ねたものだ。以前にも、集団的自衛権の導入を強行した安全保障関連法案の時に、各種法律改正の国会審議を省略し、一括で審議することにより審議時間をできるだけ短くしようとしたのである。何で一つ一つ丁寧に議論しようとしないのか。これも議論の出来ない安倍首相の、議論しないで決める方法なのだろう。

  働き方改革国会と名付けてスタートした今国会。上程予定の「働き方改革関連法案」にとんでもない事柄が隠されていた。もともと働き方改革という名前に違和感があり、正しくは働かせ改革ではないか、と思っていたが、まさにその通りであった。束ねた法案の中に労働環境改悪の為の改正が含まれている。裁量労働制の対象業務の拡大、高度プロフェッショナル制度(高プロ)の導入である。両制度とも経団連が導入を強力に進めようとしていたことからわかるように、圧倒的に使用者側に有利な制度であることは論を待たない。

  アベノミクスの失敗を何とか取り繕いたい安倍さんが、経団連に3%の賃上げを要請した見返りに経団連の要望を実現させる、という構図だ。従って、何としてもこの法案を通したい安倍さんだが、またもやボロが出てしまった。法案作成の根拠となった労働政策審議会に出した厚労省のデータに、次々と異常値が見つかり、裁量労働制の対象業務の拡大については削除して今国会に上程することになった。

  法案の残りの主だったものは、残業時間に罰則付きの上限規制の導入、非正規で働く人たちの待遇改善を図る同一労働同一賃金、高プロの導入、である。罰則付き残業時間の上限規制は長時間労働の是正の為というが、上限は100時間という。今でも過労死ラインは80時間である。過労死ラインを越えても良い残業時間規制に、何の規制効果を期待するのだろうか。同一労働同一賃金と言っても通勤手当や食事手当の待遇差を無くすなどで、基本給やボーナスについては企業内の労使協議に任される。言葉だけの同一労働同一賃金をお題目のように唱えても、賃金差別の実態に変化はないだろう。高プロは時間によらず成果で評価する制度であり、一定の給与で働かせ放題の制度である。

  誰の入れ知恵か知らないが、安倍さんは、働き方改革と称して良い面を強調したいのだろう。しかも、アベノミクスの失敗を何とか取り繕いたい安倍さんは、経団連向けの政策を乱発して、支持を引き付けておきたい。しかし、安倍さん自身は今回の各項目の中身をきちんと理解しているのだろうか。なりふり構わず法案成立に邁進するのは、よくわからないが、経団連の要望を実現させてあげよう、ということなのか。

  いつも思うことだが、国会では丁寧な議論をしてほしい。自分のやりたいことだけは、できるだけ議論は少なくしてでも何としても実現する、という姿勢では、十分な議論が出来ない。議論の出来ない安倍さんにとっては避けたい事とは思うが、これが国会本来の姿だと思う。現在の国会の状況はとても正常な姿とは思えない。