安倍政権の政治姿勢

  年金暮らしの高齢夫婦の生活費が30年間で約2千万円不足すると記した報告書を金融庁が出したことで、政府与党がドタバタ劇を演じている。金融庁の報告書に書いてあることはそれなりの事実であろう。だが、100年安心年金と言ってきた政府にとって、国民からの、今更2000万円貯めろとは何事だ、というブーイングに対し、参院選挙が近いこともあって必死の火消しに回っている、ということだろう。

  政府与党から聞こえてくるのは、ずさんな資料だ、国民に誤解や不安を与える、不適切だ、更に与党側から、選挙を控えている方々に迷惑がかかる、党としてしっかり注意して欲しい、猛省を促したい、と選挙への影響の心配ばかりである。国民に対する不安の解消より選挙が大事、という姿勢が見え見えである。

  政府与党からは政府として国民に丁寧に説明し、不安解消に努める必要がある、と大慌ての様子が見て取れる。しかしこんな話の解決策は、丁寧な説明や報告書の批判より、政府側から実際はこうである、という資料を作れば済むことである。

  折しも今年は年金の財政検証(財政再計算)の年である。これまでの例で行けば6月上旬頃には検証結果が出てくるはずである。だから、この財政検証を発表し、そこで説明すれば済むことだと思うのだが。政府は選挙への影響を考えてか、7月下旬にも実施される予定の参院選挙後まで発表を延ばすようだ。おそらく今回の報告書を追認するような結果が含まれているのだろう。

  2016年にも、年金積立金の運用損が5兆円超だったとの実績が6月末に固まり、報じられていたのに、実際に発表されたのは参院選が終わった7月末であった。参院選への影響を避ける為の損失隠しと問題になった過去がある。

  今回も、今現在最大の選挙民の関心事だと思われる年金問題を考える資料無しで選挙し、事後に報告書を出されてもその時には選挙は終わっている、では選挙民を馬鹿にした話ではないか。

  麻生財務大臣は、報告書は受け取らないと記者会見で述べた。受け取らないことで報告書は無かったことにし沈静化しようとしているのだろう。だが、受け取らない理由の中に、本人が意図しなかったであろう、安倍政権の政治姿勢が如実に表れてしまっていた。受け取らない理由は、政府の政策スタンスと異なるから、と説明したのである。つまり、各種審議会の報告書は政府の立場と一致するものだけで、政府の立場と異なる報告書は受け取らない、ということである。

  各種審議会は政府の政策の追認機関に成り下がって、政府の隠れ蓑に使われているだけ、ということだ。審議会の意見を受けて政策の見直しや軌道修正をしていく、というのが本来の姿だろう。正に本末転倒である。

  安倍政権の政治姿勢は唯我独尊的な強権政治であることを麻生さんは記者会見で語ってしまった。如何に今回の年金問題で閣内でバタバタしているか。