岸田首相は何をしたいのか

 岸田首相は東日本大震災の被災地を訪れた際、子供との対話の中で、首相になりたかった理由を子供に問われ、やりたいことを実現するために日本の社会で一番権限が大きい首相を目指した、と答えた、という。

 これはおそらく本音だろう。日本の社会で一番権限が大きいから、自分でやりたいことは何でもできる。そこには三権分立の考えは無く、首相はほぼ独裁権限を持っているような感覚しかないのだろう。また、具体的に何をしたいというのもなく、権力の維持を目的にしている、ということも見えてくる。

 岸田さんが権力を振るい始めてから感じることは、その地位は自民党内外のいわゆる保守層、つまり右派の支持によって守られていることを自覚したのかな、ということ。それによって、右派の言いなりの政策を独裁権限のように振るい、地位の保全を図っているようだ。その結果がどういうことになるかなどにはあまり関心がなく、この国の未来に対する責任など感じられない。

 岸田さんの現在進行中の政策は、安倍菅政権が敷いた新しい戦前に向かう道を完成させようと、戦後築いてきた平和国家を根底から覆すものである。軍備優先、民生後回しの政策をこれほど明確にした政権は、戦後日本にはなかった。軍備費は国債発行と増税などの財源を明示した上で5年という短期間で倍増させるという。一方少子化対策などは軍備費と異なり、当初、言葉だけは威勢よく異次元だとか言っていたが、金額も曖昧なまま、勿論財源も不明のまま。6月末までに骨格を示すというが、結局中身については来年度予算以降に先送りとし、関心が薄れるのを待って、現行からの小手先の変更で済ますつもりなのか。

 強引に推し進めてきたのが、党内外保守層の主張である、防衛費という軍備費、原発の新増設や運転期間の延長、マイナンバーカードの普及のための健康保険証の廃止。いずれも、殆ど説明も議論もせず、岸田さんが考えていた独裁的権限の行使で決めてきた。

 その一方やる気の無さが見えているのが、旧統一教会問題、夫婦別姓同性婚などの党内外保守層の反対する政策、選挙対策で持ち出したような少子化対策。これらは、もっと議論が必要だとか、議論をしているところだとか、逃げの姿勢に終始している。

 この国をどういう国にしたいのかという考えもなく、ただ保身の為だけの政策ではこの国はますます衰退するばかり。身の丈を考えて、今後どうするのか真剣に考えないと、結局は新しい戦前から新しい戦中に入ってしまうのではないか。そうなっては岸田さんの責任がどうとかの話ではなくなってしまう。