岸田首相はどこへ行く

 臨時国会が終わって1か月余り経った。臨時国会の会期中は旧統一教会関連の審議が主となり、政策一般は影が薄かった。

 その中で、岸田さんは、山際経済再生相が旧統一教会との関係、葉梨法相が死刑を軽んじる発言、寺田稔総務相が政治資金などをめぐる問題、秋葉復興大臣はみずからの政治資金をめぐる問題、杉田総務政務官の性犯罪や女性差別などの過去の数々の発言、次々と大臣や政務官の問題が出た。その度に岸田さんは当初は本人にしっかり説明してもらうと、自分が前面に出ることはしなかったが、いずれも辞任、事実上の更迭に追い込まれた。同じことを5人とも繰り返し、審議時間を大幅に無駄遣いし、他の政策の審議時間を潰した。自民党と旧統一教会の深い関係についても同じような感じで、結局総裁である岸田さんが前に出て処理の道筋をつけることはなかった。

 その一方で、臨時国会が終わるや否や、安保関連3文書の改訂を早々に閣議決定し、自衛隊に敵基地攻撃能力を持たせる。また、これまでGDP1%以内を目安にしてきた防衛費を5年以内に倍増させ、GDPの2%とする。そのために今後5年間の防衛費を43兆円とする。更に、これまでは原発は再稼働は認めるものの、その先の新増設については明言してこなかったのを、原発の運転期間の延長や次世代原発の建て替えなど推進する基本方針を正式決定した。

 このような、謂わば、この国の運営基本方針というべき重要な事柄を、国民の賛否を問うどころか、国会での議論もなしで勝手に決定し、推進していくという、とても民主的と思えないようなことをし、当たり前のようにし始めた。岸田さんはテレビ番組で、やるべきことをやっていく、というようなことを言っているが、やるべきことの内容は、岸田さんが決めることではなく、国民が決めることだろう。自分で勝手にやることを決め、それをやっていくというなら、それは独裁というものだろう。

 岸田さんは、民主的な政治の進め方というものを勘違いしているのだろう。選挙に勝ったのだから、どんな政策で何をしても良いのだ、と思っているのだろうか。あるいは、自分が独裁者になったつもりなのだろうか。自分でやっていることの重大性を認識できていない、そんな気がする言動である。

 岸田さんはこの国をどこに持っていこうとしているのか。衰退途中国の日本をどうしたいのだろうか。