迷走する岸田首相

 岸田首相の頭の中はどうなっているのだろう。今は如何にして支持率をアップさせるか、あわよくばその先に衆議院解散、更に来秋の総裁選再選へ、それしかないようだ。以前の記者会見で、税収が見込みより増えたから国民に還元する、と言っていたが、20日からの臨時国会開会を前に、19日に所得減税の検討を指示したという。

 所得減税について物価高対策の一環としているが、どこまで本気で、どの程度考えてのことなのか。その財源はどうするのか、まさか国債の発行とか。しかも、物価高対策というものの、今言われているのは、実施できるのは来年の6月ごろで、1年限りという。他の政策と同様、またも対症療法的に小手先の支持率回復策でなく、実効性のある政策を考えたらどうなのだろう。例えば、本気で税収増を還元する気なら、物価上昇に伴って増加する消費税を還元するように、消費税率を引き下げる、というような政策も考えられるだろう。

 支持率に影響するからか、減税の話を持ち出して関心をそちらに向け、増税については触れないというのは、国民を馬鹿にした話だろう。防衛費の大幅増額の財源はどうするのか。昨年末から口先だけで言っている異次元の少子化対策について、その中身はどうなっているの。その財源はどうするのか。余裕のない今の財政状況では、歳出のうち何かを大幅にカットする。その場合は何をカットするかを具体的に明示する。それができないなら増税するか、あるいは全て国債発行で賄うか。選択肢は多くない。

 国民に対して財源を示さずに政策だけ示して選挙をし、後から足りないから増税だとか国債増発だとか言うのでは、まともな政治とは言えないだろう。新しい政策には新しい財源が必要になる。当然のことなのだから、後で増税が見えている現状で、減税だけの議論をするのはおかしいだろうし、全く正常な政治とは思えない。

 鈴木財務相は記者会見で、物価高対策として所得税などの減税を検討することと、防衛力強化のために所得税を含む増税を議論することは、増減税の目的が異なり別の話だとして、矛盾しないとの見解を示した。情けない。これが岸田内閣の財務相の言葉か。国の財布はひとつ。岸田内閣では政策ごとに独立した予算で政策実行しているのだろうか。今般の臨時国会で減税が議論されそうだという。その時に合わせて防衛費や少子化対策に向けた増税議論も併せて行えばよいと思うのだが。予算委員会で減税と増税の議論が並行して行われれば、如何に滑稽な図になるかわかるだろう。

 岸田さんの政策は、いつもどこかの誰かに丸投げし、短期間の期日で結論を出すように、だけ指示する。その結果出てくるのは、その時々の対症療法的なその場限りの弥縫策ばかりで、本質的な解決策に取り組もうという姿勢はない。今回も経済対策の減税と他の増税との合わせ技のようになってしまった。