信頼されない日本の政府

 岸田首相の政策の大本になっているのは、如何にして首相の座に長く居座るか、に収斂されるようだ。首相の座に長く留まるには、まずは自民党内での支持を確保すること。その為には、選挙で勝利を収めること。この二つに尽き、そこには国民の為という考えは入ってこない。

 まず党内支持を固めるために、実行力があることを示さなければならない。最近の岸田さんは看板のマイナカード政策の進め方にみるように、問題があろうが、何が起ころうが、強引と言われようが、無理筋と言われようが、異論には耳を貸さず、とにかく当初の予定通りに力ずくで進める。ここで修正や開始時期の延長などすれば弱腰とみられ、党内支持を失う。

 特に、いわゆる党内保守派への気遣いは異常なほどである。保守派の反対が予想される案件については、一応進める態度は示すものの、自ら前面に出て、ということはなく、党側任せとか、官僚任せとか、何とか会議を作るとかで、そこへ丸投げしてしまう。あとは中途半端な形で消えていくのを待つ、という感じ。旧統一教会問題の現在位置はどうなっているのか。夫婦別姓問題は。LGBT理解増進法案は何のための法律か解らないような形にしてしまった。

 そんな感じで党内支持は何とか得ているものの、もともと少数派閥(党内第4派閥)の為、党内では強気になれない。それで、国民の支持を背景にした強気の政権運営をしたいということで、選挙勝利に向け、国民に最大限のアピールをすることになる。その典型が少子化対策であろう。

 異次元とか言いながら、結局は少子化に本気で取り組んでいるようには見えず、異次元と銘打って、こども未来戦略会議という、これまでも幾つも作ってきた有識者会議と同様のものを作って、そこで検討してきた。なぜ少子化が進んでいるのか、ほぼ当事者たる若者の声を聴くのかと思ったら、19名の構成員の内20代は2人だけ。あとはこれまでの有識者会議の構成員になるような人々。

 そこで決定された方針を見て、このメンバーならこの程度だろうなという感じ。岸田さんの本気度を疑うのに十分なものだった。本質論は語られず、バラマキのオンパレード。主たるものは児童手当。その他これまでに語られてきたものや、思い付きのような政策の羅列。若者の声はどこにも反映されていない。しかも、予算規模は3兆5千億円と巨額だが、本来予算とセットの筈の財源は示されていない。財源の裏付けのない予算などどれほどの意味があるのだろうか。しかも、これだけの予算を見込んでいるのに、対少子化にどの程度の効果を見込んでいるのかさえ語れないとは。

 つまり、岸田さんの異次元の少子化対策とは、対策の効果も怪しげで、財源の裏付けもない。だが、巨額費用でのバラマキメニューであり、そう遠くない時期と言われる総選挙向けの看板用に設えたものだろう。しかも、財源は示さないのに新たな税負担は生じさせないとしている。どこから財源を持ってくるのだろう。税金という名でなく、社会保険料などの異なる名目の負担であれば約束を違えることにはならない、ということか。税負担が増えるとなれば、選挙は戦えないとの判断だろう。財源と国民負担の増加という点では防衛費も同様の事態になっている。

 財源を明示できないのに費用だけは巨額の、国民受けのする政策を大々的に宣伝するとは。空手形みたいな政策を掲げて選挙を戦おうというのだろうか。ここんなことがまかり通るとは。日本の社会も最早これまで、という感じだ。