日本国の衰退を止められるか

 かつての輝きを失った日本。今や紛れもなく衰退になってしまった。なぜこんなことになってしまったのか。その原因の一端が岸田政権が昨年来打ち出して来た諸施策の中に表れているような気がする。代表的なものが俗称で原発運転期間延長法やマイナカード法だろう。

 原発はいわば利権の塊である。自民党政権が旧来の利権に群がり、原発の運転を継続させることで、再生エネルギーに舵を切ることができない。ロシアのウクライナ侵攻で原発が攻撃対象になりうる、ということが認識された。しかし、そのウクライナ侵攻によるエネルギー価格高騰に乗じて、当面のエネルギー価格上昇を、将来にわたって原発を使用し続けることで対応する、とすり替え、再生エネルギーより原発を選択した。将来の話なら、今からでも再生エネルギーに舵を切り、そこに注力して世界からの遅れを少しでも散り戻すこともできる。

 かつて太陽光発電で先頭集団を走っていた日本は、国策として太陽光より原発を選択した。その結果、今や国産の太陽光パネルの国際競争力は見る影もない。更に、他の再生エネルギーにも目を向けず、原発最優先を貫いた結果、当初は先頭集団に居た風力発電技術も、今や、国産の風力発電設備は無くなってしまった。国もようやく重い腰を上げて風力発電に目を向け始めたが、設備は全て輸入という惨状。

 今も基本は原発優先。国内配送電網の利用は原発が最優先である。送電網に未使用の余裕があっても、原発の利用見込み分は再生エネルギーはでは使えない。この為、電気代が高騰している現在でも、送電網に余裕が無くなるという理由で、一部では太陽光発電の発電停止を要請している。しかし、今回もまた原発最優先を打ち出した。

 自分たちの権益を優先した結果が国内技術の発展を阻害してきた。その結果として再生エネルギー技術も周回遅れとなってしまった。

 マイナカードは、現在いろいろな問題が噴出している。なぜか。政府は日本社会のデジタル化が遅れているとの認識から、早急に追いつきたい。その為にはマイナカードの普及が急務だとなった。だが本質的に、マイナカードの普及は、デジタル社会への切り札などではなく、部分的なひとつの手段に過ぎない。形だけデジタル社会風を装っても、実態が伴っていない。

 2兆円超の費用を使って集めたマイナカード利用申し込みも、カード制作以降の作業は全て手作業というアナログ。しかも、利用規約で「システム利用及び利用できないことによりシステム利用者または他の第三者が被った損害について一切の責任を負わない」と政府の免責を明言している。その中で現在起こっている各種問題。これは手順全般の制度設計のミスにもかかわらず、現場の作業ミスや確認ミスというヒューマンエラーだと、責任は政府にはなく、現場にある、との認識を示してきた。

 誰が作ったのか知らないが、まともな運用システムの設計ができないという致命的欠陥をそのままに、一見デジタル社会風を装っても、行き着く先は見えている。ここは一旦立ち止まって現行運用システムを検証し、再出発すべきではないか。スタートしたからにはどこまでも突っ走る。不備があっても目をつぶる。必要最小限の修正で済ます。これでは社会基盤としてのデジタル化の設計は難しいだろう。

 一度始めたら途中でそれまでの検証をすることもなく、検証しないから見直すこともしない。不具合があっても無かったことにしたり、影響は軽微として、一旦中止して再検討することもないし、勿論引き返したりすることもない。こんなことでまともなシステム運用ができるのだろうか。現状ではマイナカードの根本的な制度設計の見直しが必要だろうし、デジタル社会の構築という観点からは、その進め方に大いに問題がありそうなので、再度工程表の作り直しが必要だろう。

 一度決めたら止めない、引き返さないという、従来型の行政から脱皮し、もっと柔軟に検証、変更、中止、ができるようにしなければ、先進国との差はますます広がり、衰退の道を歩み続けることになるのだろう。今の岸田内閣では衰退国日本がますます衰退するのを止めるのは難しそうだ。