岸田首相の安全保障

 安全保障というとすぐに防衛費と結び付けがちだが、安全保障の本質は国家の維持・存続ということだと思うのだが。岸田首相の考える安全保障は他国からの武力による侵略を防ぐこと、と考えているようだ。今年度予算を見ると、日本の周辺情勢から軍備の増強は早急に進めなければならないと、何より最優先で巨額の配分をした。

 しかし、他国からの攻撃に備えれば、それが安全保障だと考えるのは早計だろう。今にも他国から攻撃を受けるような感じで軍備増強に走る姿は、この人はこの先何をするのかわからない、という意味で怖さを感じる。軍備最優先の考えはどこから来たのだろう。今は岸田さんが領袖の宏池会の本来の考えではないはず。やはり岸田さんは自分の地位を守る為に、右派の言うことを聞いているのだろうか。もともと自分の考えがあるとも思えないが。

 安全保障イコール軍備増強としか考えられない今の岸田さんにとって、輸入頼りの食料をどう考えているのだろうか。食料の重要性は兵器より優るとも劣らないはず。日本の食料自給率がカロリーベースで38%程度という。G7の中で最低水準である。有事の際には、ミサイルや戦艦をいくら揃えていても、食料が続かなくては話にならないこの点をどう考えているのだろうか。

 食料安全保障についての議論が真剣になされているという話を聞いたことがない。食料は足りなければ輸入すればいい、とでも思っているのだろうか。国土や国民の生命財産を守ると口では言うが、その為に軍備以外に何をするのかという話を聞いたことがない。本気で考えているとも思えない。確かに他国の攻撃からの備えの軍備も必要だろう。だが、軍備だけで本当に国民の生命財産を守れると思っているのだろうか。今般のロシアのウクライナ侵攻を見ればわかるように、国家間の紛争が始まれば世界的に食料が逼迫する。どこの国でも自国内の食料確保が最優先である。日本が輸入したくても、物がなければできない。もっと食糧問題を真剣に考えないと、有事の際には国民が飢えに見舞われることは明らかだろう。

 食料だけではない。日本の原発はその多くが日本海側に並んでいる。国土が狭いから太平洋側でも日本海側でも大差ないようだが、想定される敵国に腹を向けている感じである。原発はそれ自体が攻撃されれば核兵器と同じである。そうでなくても、自然災害とか事故とかで、何かあれば周辺住民は放射能汚染に晒される。にもかかわらず、避難計画もない、あっても実効性の薄い原発がほとんどの現状をどう考えているのだろうか。

 国土と国民の生命財産を守ると簡単に言う岸田さん。山積する諸問題をどう解決して守るのか。本当に真剣に考えているなら、その方策の一端でも披歴してほしい。