新しい戦前に向かうのか

 岸田首相はどうやら前の安倍菅政権が敷いたレールに岸田内閣という機関車を乗せて、新しい戦前に向かって突進しているようだ。運転手の岸田さんには周りの景色が大きく変わってしまったことに気が付く余裕もなく、ひたすら前しか見ていないようだ。機関車は運転手のただ前進するのみの操作だけで、線路から逸脱しないように走っているようだ。

 復刻版のあたらしい戦前の実現に向かって走っているだけならいいが、その先に待っているのはどんな国なのか。それが岸田さんにとっての理想郷なのだろうか。その頃にはかつてG8からロシアが落ちこぼれたように、今のG7から日本を除くG6になっているのではないか。

 G7の中で日本は西側諸国とはその価値観のずれが次第に明らかになってきている。今回のG7サミットの一環で各種会議が持たれているが、その中で環境大臣会合では、議長であるはずの日本が二酸化炭素の排出量規制に関し、電気自動車や石炭火力の規制に関し、欧米の厳しい目標に対して抵抗し、目標を大幅に後退させ、石炭火力については目標すら設定できないという事態になった。

 更に、環境相会合後の共同記者会見で、福島原発の処理水の海洋放出について、西村経産大臣は、科学的根拠に基づく我が国の透明性のある取り組みが歓迎されると説明したが、その場でドイツ側から、処理水の放出を歓迎することはできない、と反発された。西村さんは会見後、私のちょっと言い間違え、と釈明したが、言い間違えではなく、国内向けに意図的に都合のいいように話を代えた、ということだろう。

 国際会議の内容も改竄発表しようとするようでは、とても他の6か国と同レベルとは言えないだろう。防衛費だけNATOレベルにしたからと言って、ものの考え方は相当異なっているようだ。政府の国民に向き合う姿勢は世界の報道の自由度ランキングにも如術に現れる。英米やEU諸国は第2のグループ(満足)に入っているが、日本は180カ国中の71位で第3グループ(問題あり)だ。台湾や韓国も第2グループなのに、である。

 日本は情報の価値というものをどう考えるのか。G7の中で価値観の相違で1国だけ浮き上がっているような状況は、いつまでも続けられないだろう。今は唯一のアジアの国であり、何か事が起これば無条件に追随してくれる日本は、G7の他の国からは都合のいい国に思えるのだろう。だが衰退途中国の日本がいつまで今の経済力を含む国力維持できるのだろうか。

 この先の日本の姿をどうイメージしているのか、岸田さんの口からはきいたことがない.おそらく岸田さんには日本の将来像という概念は無いのだろう。