もう限界ではないのか

 なぜ、防衛費を上げるのか。日本はアメリカのことをどう思っているのか。

 小学6年生には、分からなかった。だから、岸田首相に手紙を書いた。

 東京都の私立小学校6年生の36人が今年初めに書いた手紙は、こう始まる。

 <私たちは、社会科や総合学習で、沖縄のことや戦争のことを学んできました。戦争は遠い昔の話だと思ったのに、今も苦しんでいる人がいることや、今にも続く問題であることがわかりました>

 この後に具体的な質問が書かれているのだが、内容は一般国民が感じている疑問と同じような、なぜ、なぜ、なぜ・・・である。岸田さんが国民に具体的な説明をしてこなかった部分であるから、親に聞いても、先生に聞いても、答えられない部分である。

 そこで子供たちは岸田首相に聞こうとなり、直接「首相官邸 岸田文雄様」宛の手紙にして書いたのだろう。これに対し岸田さんは、2月24日の記者会見後、報道各社が追加で示した質問への回答で、手紙について<一つ一つにお返事を出すことは困難でありますが、安全保障政策については、国民の皆さんのご理解を得られるよう努めていきます>と回答があったという。いつものように、全く回答になっていない。

 3月6日、担任教諭から児童にこの「回答」が伝えられた。手紙で書いた質問は多くの人が疑問に思っていること。もう少し、しっかり答えてほしい。そんな声が上がり、児童らは再び岸田首相に手紙を出したが、音沙汰はなかった、という。生徒達は岸田さんの考えを自らの言葉で聞きたかったのだろう。

 ここに岸田さんの考え方が良く分かる。岸田さんは何か考えを聞かれると、何も考えていないことを誤魔化すために使う常套句である、理解を得られるよう努めていく、丁寧に説明することが必要、重く受け止めている、などその場限りの言葉を発してかわせばいい、そんな日常的な態度が、子ども相手にも軽い気持ちで出たのだろう。だが、先に福島の被災地でのこども政策対話の時も、総理になりたかった理由を問われ、首相が日本の社会で一番権限が大きいから、と何をしたいのかは話せなかった。

 おそらく岸田さんは、きちんと物事を考える習慣がないのだろう。それが政策面でも現れ、防衛費増額のような、はっきりわかる数字的なことは言うが、何故そうなのかは説明できない。新しい資本主義や異次元と謳った少子化対策も、何をするのか中身を説明できなく、周囲が慌てふためいている。だから、国民に向かって分かりやすい説明など出きる筈も無い。直近での健康保険証廃止問題も、内閣支持率の低迷打破で来秋からの延期を図ったが、何故支持率が低迷してきたのか、問題の本質が分からず、閣内への説得も十分にできず、廃止延期は明言できず、中途半端な会見に終わった。

 政権支持を取り付けるために、このまま訳も分からずひたすら軍事国家に向かって進むのだろうか。本文の無い表紙だけの本みたいな政策を掲げ、糸の切れた凧のように宛もなくさまよう国にしてしまった。日本という国をどうするつもりなのだろうか。総理大臣になることが目的だったのなら、もう目的は達成したのだから、さっさと辞めるのが理にかなっているのではないか。