方針無き政策

 岸田首相が、税収増加分を国民に適切に還元する、と語っている。22年度の税収が6兆円ほど上振れたことによるものと思われる。国民への還元とは何を意味するのか。相変わらず具体策はなく、今のところは観念論だけである。

 岸田さんは何をしたいのだろうか。これまで防衛費の大幅増加の財源として増税を打ち出し、何をするのか内容は分からない少子化対策には、財源は社会保険料に上乗せ、とか言われている。いずれの予算も巨額が見込まれるが、その財源についてはきちんと語っていない。一方で政策の財源を明らかにせず、一方で減税を匂わせる。来秋の総裁選を控え、早い時期に衆議院を解散し、選挙の勝利を実績として総裁選を乗り切ろう、という事のようだ。

 まだ衆議院銀の任期は半分の2年にしかならない。そんな時期に解散を考えるとは。首相の地位守ることしか年頭にない岸田さんにとって、来秋の総裁選に勝つためなら解散総選挙でも何でもありだし、言っていることの一貫性など気にしない。低迷している内閣支持率を上げるには、兎に角バラマキが手っ取り早い、という事なのだろう。

 岸田さんはこれまで、その時々に思いついたような、スローガン的な耳障りの良いことは言うが、その詳細については自ら語ることはない。いつもどこかの誰かに丸投げし、短期間の期日で結論を出すように、だけ指示する。その結果出てくるのは、その時々の対症療法的なその場限りの弥縫策ばかりで、本質的な解決策に取り組もうという姿勢はない。

 今盛んに振りまいている国民へ還元するという話も、一方で財源の当てのない政策を並べ、後から財源をどうするか検討しているが、当然の如く結論は出ない。そんな中でも平然と税収が上振れたからその分は国民に還元するとか、何を言っているのか。税収が上振れるという事と、予算が余る、つまり剰余金が出るという事とは違う。

 税収の上振れで剰余金が出れば、財政法により半分は国債の償還に充てなければならない。剰余金は出ないのであれば、還元する分は赤字決算になる。赤字なら国債を発行してでも還元しようとしているのか。消費税増税はしないとは明言したが、その他税での増税をしないとは言っていない。この辺の説明も全くない。

 何も考えずに有権者の気を引くバラマキの言いたいことを言って、選挙が終わってしまえば知らん顔で済まそうというのだろうか。予算も赤字国債の発行を前提に組まれているので、予算で剰余金が出てもそれは赤字国債から出たもので、何の考えもなしに、即国民へ還元、で良いのだろうか。一方で予算の中から予備費とか基金とかという名目で、政府の自由裁量で使える巨額の枠を持っている。税収に限らず、国への収入は政府与党の自前の資金と勘違いしているのではないだろうか。