来年度予算概算要求の概要

(年度は西暦下2桁、予算はいずれも当初予算)

 政府の2024年度一般会計の各省庁の概算要求総額は114兆円程度となる見込み。110兆円を超えるのは3年連続になる。

 今回増加額が目立ったのは財務省の要求額で、国債の償還、利払いに充てる国債費は28兆1400億円と23年度当初予算から2兆8,921億円増加。防衛費要求額は、7兆7050億円と23年度当初予算から9000億円余り増加。厚生労働省は33兆7275億円は今年度予算より5900億円多い。さらに、岸田さん肝いりの異次元の消費化対策費をはじめ、政府が重要政策とする分野で具体的な金額を示さずに要求することを認めているいわゆる事項予算は含まれていない。総額として一体いくらになると見込むのか。

 税収を見ると、税収は19年10月に消費税率を10%に引き上げた影響を除くと、21年度は67.0兆円。22年度の税収は71兆円強となる。23年度は約69兆円を見込むが、前年並みに上振れる(前年は約3兆円)とすれば+3兆円で72兆円。更に、いま議論している24年度予算に見合いの税収は、最近の対前年平均伸び率3%として74兆円。つまり74兆円の収入に対して114兆円+αの支出を見込んでいる。

 国債費はこれ迄の杜撰な財政運営からきているので、今更どうにもならない。また高齢化に伴う社会保障費の増加を踏まえた厚労省の増加はやむを得ない。その中での防衛費の増加は何なのか。子ども予算は財源が見つからず、というより、防衛費だってもともと財源など無いのに、あたかもあったかのように装っている。歳入不足なのだから、無ければ国民の社会生活が成り立たないもの以外は、新規や追加の予算などの財源は全て国債発行でしかありえない。国有財産の処分や税外収入などの歳入が見込まれるならば、見合いの国債新規発行を減らすのが本来だろう。

 国債は将来世代が返済していくこととなる。ならば、もっと将来世代に役立つことに予算を割けないか。先日話題になったように、国立科学博物館で光熱費の高騰に悲鳴を上げ、遂にクラウドファンディングで呼びかける事態となった。国民のほうが事態の深刻さを真剣に受け止め、早々に目標額は達成。その後も寄付額は増加しているという。

 このように、今の自民党政権は科学や学術関係に予算を使うことに後ろ向きである。金を出すけど口も出す。軍事関連の研究なら出す。など予算を出すなら自由な研究はさせない。予算が必要ならそれに見合う働きを示せ。など政権にとって目先の有用な結果を求める。予算を使っての自由な研究などもっての外、という感じである。もともと寄付文化が根付いていないこの国で、『ふるさと納税』という見返りを求める寄付もどき文化を根付かせてしまった我が国で、一般の研究に寄付を求めるのは難しい。

 将来世代の為にも、増額しようとしている防衛費の10分の1でも20分の1でも自由に使える科学振興関連や学校給食等を含む学校関連の予算に向けられないのだろうか。防衛費からの振替なら、そんなことに使う予算は財源が無い、とは言えないだろう。

 将来の為に必要な、岸田流でなく本当の意味での少子化対策予算、自由に使える基礎研究等に必要な学術研究予算、子供が貧富の差なく公平な教育を受けられる環境を作るための予算、などの優先すべき課題が、防衛費優先でないがしろにされている現状。これが続いていくと、衰退途中国のこの国はますます衰退してしまうのではないか。