岸田政権の政策もどきの行方

 岸田首相から出される政策もどきはひどいものだ。やりたいことの良し悪し以前の問題である。一つは、思い付きのような言葉だけで何をしたいのか中身がわからないもので、異次元の少子化対策や子供関連予算の倍増など。もう一つは、言葉を並べただけで、中身のないもの。防衛費の抜本的強化や原発の新増設はこちらに属するだろう。この2種類の言葉遊びを打ち出して、もっともらしく政策もどきにしているだけ。

 先ず、言葉だけで中身のないものとして防衛政策の大転換があるだろう。昨年末にいわゆる安保関連3文書を閣議決定した。防衛政策は国の基本的重要政策だと思うが、これまで専守防衛を基本としてきた政策を180度転換し、敵基地攻撃能力の保有を認めるという。岸田さんは議論を重ねてきたというが、国民への説明は勿論、国会での議論すらせずに、身内だけで進めてきた話なんて議論とは言わない。

 こんな、国家の基本姿勢を成す重要事項すら議論しないで決断したと突然発表し、国民へはもとより、国会での説明すら後回しに、G7諸国に説明して回って来るとは。特に米国では、増額する防衛費で大量の兵器を買うことを約束して、米大統領に歓迎されたと悦に入っているのは、日本は米国の属国の地位から脱していないという悲しむべき現実だろう。

 国防政策の転換に伴って、これまで防衛費は歴代政府がGDP1%程度としてきたものを、いきなり2%にすると打ち上げた。それに伴い、今後5年間の防衛費の総額を43兆円とするという。勿論なぜ2%や43兆円が必要なのかの説明はないし、そのお金をどう賄うのかの説明もない。その後、とってつけたような財源の内訳が出てきたが、1兆円は増税による、としていることに自民党内でも賛否が紛糾。

 結局、どんな脅威に対して、どんな装備を、どのくらいの予算をかけて保有するのか。その財源はどう確保するのか、というごく基本的な議論が党内ですらなされていないことがバレてしまった。今頃になって政策の前提条件である財源でもめるとは、あきれた話だ。背伸びして、身の丈に合わないことをしようとすれば当然無理が露呈する。

 財源の目途もなく金額だけが先行するような、防衛費増額を目的とした中身の空っぽな話なのだろう。日本の方向性を大転換するような重要政策なのに、こんな乱暴な決定の仕方で良いのだろうか。危惧するのは、財源がないのだから、結局は忘れた頃に増額部分は何も言わずに国債発行となるのではないか。国債発行で防衛費を賄うようになれば、現状の独断専行の政治の進め方と相まって、いよいよ「いつか来た道」を進むことになるのではないか。

 財源もなく、やりたいことを並べただけの岸田政権の政策、いや政策もどき。なんだか日本の行く末を暗示しているようなきがする。これから始まる通常国会で、本来の意味での議論を堂々として欲しいものだ。