どこへ行く日本の防衛政策

 国会審議が始まって岸田首相の各種政策の中身の薄さが露呈している。口癖のように言うところの丁寧な説明は国会審議においても相変わらず為されないまま。政策決定過程のいい加減さが、これでもかというほど随所にみられる。

 従来からの専守防衛だった安全保障政策を大幅に変更し、敵基地攻撃能力の保有を可能にするという。では、どういう場合に、どういう対象を、どういう装備によって攻撃するのか。国会でのそのような質問に対しては、例示することは安全保障上考えられないなどと、一切の説明を拒否。更に、今後5年間で43兆円の防衛費を見込んでいるが、その使い道についても、詳細を明らかにすることは適切でない。手の内を明らかにしない配慮をした上で最大限の説明努力をする、と述べただけ。結局何の説明も出来ないまま。

 国家の基本方針の大転換なのだから国会で説明が求められるのは当然のこと。安全保障上の問題がある、ということで何も説明せずに国会を通そうというのだろうか。岸田さんは何かあると、1年以上議論を重ねてきたというが、何を議論したのか。

 当然のことながら、国民に対してある程度の範囲であるにせよ説明する必要があるし、国会での説明責任もある。どう説明するかも当然議論の対象になる筈。巨額の予算を要求しながら、何の説明もせずに、防衛予算は無条件で認めろ、ということなのか。

 岸田さんは、結論ありきで、有識者懇談会だか有識者懇親会だかで、出来レースの会議をいくらやっても、外部に説明責任を果たせるだけの内容の議論は為されてこなかった、という現実を突き付けられた格好だ。碌な議論もせずに専制政治のように進めるやり方では、国民の理解は得られないだろう。

 手続きは、面倒でも、手間がかかっても、真の意味での丁寧な、民主的手続きを経る必要があると思うのだが。