少子化対策の本気度は?

 岸田内閣は異次元の少子化対策のたたき台になるこども子育て政策の試案を発表した。異次元の少子化対策と前宣伝は仰々しかったが、岸田首相の本気度に大いに疑問符が付く内容だ。防衛関係では、ろくに議論もせず防衛3文書改訂を閣議決定し、予算も5年で43兆円と大盤振る舞いで早々に決めた。GXでは、これもろくに議論もせずに原子力発電所の運転期間の延長のみならず、新増設まで進めると踏み込んで決定した。

 少子化対策のたたき台とは言うものの、出てきたものは誰が決めたか知らないが、何人かで集まって、何か少子化に役立つアイデアは無いかと頭を捻って浮かんできた項目を羅列しただけ、という感じのもの。実施時期は勿論、予算規模や制度の組立概要すら示されていない。これでは、少子化対策のアイデア募集として一般公募した方が余程ましという感じ。

 そもそも、出てきたものは子育てに関することばかり。これらは子育て政策としては全部やるべきものばかり。だが、これで子供を作ろうという気になるかというと、なかなかその気にはならないだろう。お金の苦労をしたこともないし、将来の心配をしたこともない人たちが考えたに違いない。更に言えば、日本の国の将来についても楽観的な人々だろう。

 なんで岸田さんは防衛費や原発の時のように独断専行で決めないのか。本気でやる気がないからだろう。これから6年から7年が正念場と本気で思っているなら、今の時代になぜ出生数が減り続けるのか。また、婚姻率が下がり続けるのか、きちんと調査してみるといいだろう。今ある調査だけでも、男性の年収と未婚率との相関関係ははっきりしている。更に、生活の基盤という意味では現在の雇用形態によって安定度が違うというのも一面的とはいえ、否定できない部分であろう。

 少なくとも将来の生活が見通せない状況下で、子供を産み育てることは考えられないというのが自然ではないか。岸田内閣が出したたたき台で一定期間の補助金的なものを貰っても、それはあくまでも一時的であり、生活基盤を支えるものとはならない。ましてや示されていないそれらの財源が、税金であれ社会保険料であれ、将来負担の増加になることは間違いない。貰う以上に負担増となることもありうる。

 岸田さんは、国の財政の中で余裕のありそうな部分については全て防衛費に回している。それでも防衛費は足りないので増税するとしている。そんな中で、少子化に回す予算の余裕はない筈である。何をするにも増税社会保険料の負担増という形で国民負担の増加になる。それを避けようとすれば赤字国債に頼ることになるが、国債の積み増しも結局は将来世代に負担を押し付けるだけである。

 岸田さんは、たたき台を基に6月末までに骨太の方針に盛り込むとしているが、結局のところ、統一地方選挙前にやってる感を演出して支持を得ようとし、国会が閉幕する6月末頃に骨太の方針に何らかの項目を入れて終わり、となりそう。骨太の方針に何を入れても入れなくても国会は閉じているので、その内容が国会で議論されることはない。これは昨年12月の臨時国会閉幕後に国の方針を変える国防や原発の政策変更を、国会で議論することもなく閣議決定だけで済ませてしまったのと、全く同じことやろうとしているのだろう。

 こんなことを続けていて、日本の将来に展望があるのかいささか疑問である。これから子供を産もうかという若い人々に、それでも子供を産もうという気にさせられるのだろうか。