場当たり政治の岸田首相

 昨年度令和4年度の国の税収は3年連続で過去最高を更新したという。また、決算剰余金も2.6兆余りと過去2番目の規模を計上。決算剰余金の半分は法律の規定で国債償還資金に積み立てられるが、あとの半分は防衛費の上乗せ分に充てるという。

 2024年度の予算要求ルールを定める概算要求基準で、異次元という少子化対策予算はこの基準の例外扱いとする。また、岸田首相のいう新しい資本主義関連は重点枠として4兆円強の要求を認めるという。また、物価高対策など重点政策に必要な経費も、金額を定めない事項要求として認める。更に、政策に使う裁量的経費は前年度から1割削減を求める代わりに、削った額の3倍を重要政策推進枠として要求できるようにする。これが4兆円規模となる。これらの上に社会保障費の高齢化などに伴う自然増が5~6千億円見込まれるという。一体幾らの予算規模を見込んでいるのだろうか。

 「入るを計って出を制する」という先人の教えなどどこ吹く風。岸田さんにとっては「出を計って入るを計らず」。政権維持のためには党内支持を維持する為に大盤振る舞いをしなければならないのだろう。だがちょっと待て。当然のことながら現状でも国債頼みの財政運営である。使いたいだけ使って後は国債増発だけで尻ぬぐい、では見栄えが悪いと、財源不足を理由に国民に更なる税負担を求めようとしているのはどういうことか。

 勤労者の通勤費や社宅費への課税、退職金に対する増税などを狙っているという。その前には社会保険料負担増や所得税の増加が先行して取り上げられている。取りやすいところからどれだけ取ろうというのか。2005年位までは35%位で推移していた国民の租税等負担率は今や50%弱まで上昇してきた。その一方、消費税率の上昇に合わせたような企業減税により実効税率は1997年頃まで50%弱あったが、今や30%を切るまでに下がった。

 政策的に何をしたいのかわからない岸田さん。一貫した政策方針もなく、軍事費の倍増をはじめ、大盤振る舞いの予算で、何かやってる風を装うだけの政治。財政面でも何も考えはないようだ。自身の地位安定のために、使いたい放題の予算を組み、その一方で、歴代内閣から受け継いだ財政収支均衡を放棄できず、ここでも増税できるものは何でも増税する。それらがどんな影響があるかなどは一顧だにしない。

 こうした政権運営、財政運営でこの国は一体どうなっていくのだろうか。誰のための政治をやっているのか。歓迎しているのは、財界の一部、一般国民とはかけ離れた富裕層、国会議員と高級官僚、といったところか。日本の現状は、ひとり親世帯の貧困率は2人に1人、子供の貧困率は6人に1人と言われている。一般庶民はこれ以上絞っても一滴も出ないところまで絞られるのだろう。どう考えてもこの先に明るい未来が来るとは思えない。