マイナカードにこだわる

 マイナンバーカード(以下マイナカード)の現状の問題点が連日のように報道されている。遂に、第三者機関(個人情報保護委員会)がデジタル庁に立ち入り検査をする事態になった。国家機関であるが、一応第三者の立場からの個人情報の取り扱いを軸に調査し、行政指導を行うことも視野に対応を検討するという。ただ、検査をする側と受ける側の両方の担当大臣が同じ河野大臣という点には不安があるが。

 岸田政権は、24年秋に現行健康保険証を廃止し、マイナカードに1本化しようとしている。しかし、問題山積の根本原因は解決していない。現在、政府の指示で全国一斉点検をしているが、これも導入時と同様に全く信頼性に欠けるやり方で実施している。

 政府に、マイナカードを導入するということの重大性、導入による影響、問題発生時の影響の大きさ、に対する認識があまりにも無さすぎる。兎に角導入してしまえば何とかなる。そう簡単に考えているのではないか。そうでなければ導入時に、きちんと導入手順を検討し、マニュアルを作成し、シミュレーションを繰り返し、問題点を洗い出し、これで大丈夫というまで手直しをしてから実行に移す。システム関連だけでも最低限そのくらいのことは当然実施すべきだろう。

 何でもかんでもマイナカードに紐付けをする。それによりどんな問題が発生するのかなどは無視し、これで便利になるだろうと、政府の考える便利さの押し付けに、ポイント付与という餌をつけて、問題が発生していることは伏せて、がむしゃらにカード普及を図ってきた。ところが、マイナカード関連法案が成立するや、これまでに伏せていた問題点が一斉に表沙汰になり、マイナカードに対する不信感が一気に高まった。

 政府は、慌てて全国一斉に問題点を洗い出し、データを修正するように、全国の地方自治体に指示を出し、8月上旬目途に中間報告を出すという。政府がどこまで本気なのか。相変わらず点検の方法などは示さず、その一方で、期限だけは決めて、方法等や何をどう報告するのかは各自治体に丸投げ。根本的な問題点の洗い出しには程遠い。自治体職員に、マイナカード専任の職員がいる訳では勿論ない。通常業務にプラスアルファの仕事である。おそらくそんなことにはお構いなしなのだろう。

 これだけ導入時のシステム不備や情報管理上の問題点が表面化しても、スタート地点に戻っての抜本的な見直しはしない。それどころか、24年秋の健康保険証の廃止については動かさない、と頑なに拘っている岸田政権。一体何を守ろうとしているのだろうか。追い込まれる前の早い時期に、一回立ち止まって見直しをして再出発をする、と決断した方が政権にとって傷が浅いと思うが。見切り発車した時の国民生活への影響を考えたら、安易な見切り発車は到底できない筈だが。

 ここまで拘るという異常さから、ここにも巨大利権の影がちらついているのだろうか。めったにない兆円単位のビッグプロジェクト。巨大企業に巨大利権、それに対する直接間接の巨額の献金まで想像すると、スタートラインは死守する、という事でなければ良いのだが。