行政文書も怪文書なの?

 岸田首相にはリーダーシップも、危機管理能力もないようだ。更に、今になって始まったことではないが、自分の言い出したこと以外は全く無関心というか、われ関せずという態度。

 高市経済安全保障担当相大臣に対する立憲民主党小西議員の放送法関連文書に基づく質問に対し、文書の内容は捏造されたものである。事実なら大臣も議員も辞める、と答弁。この文書は後日、高市大臣が総務大臣時に作成された、総務省内の正式な行政文書であることが分かっている。高市大臣はその後、文書内の自分の登場場面の4ページ分は事実と異なるが、その他は分からない、と答弁を一部変えた。だが、一貫して自分がそのようなことを言うはずがない、との主張を繰り返してきた。その一方で、総務省は正式な行政文書であると認め、捏造の事実は認めていないものの、その内容については一部正確性が確認できていない、と公表した。

 これまでの期間、岸田さんは一貫してわれ関せずの態度を取り続け、この件での野党からの質疑に対しても、高市さんには真摯に対応し、丁寧に説明してもらいたいと、まるで他人事。直接高市さんに言うでもなく、単に作文の朗読をしたに過ぎない。その上で、罷免要求に対しても、罷免する理由がない、と突き放してきた。

 これに対し、高市さんは岸田さんが養護に回ってきたとみて、参院予算委員会最終日の28日、これまでの捏造から、あの文書は怪文書の類だと強気の発言に転じた。官僚が文書を偽造や変造する理由はなく、ましてや怪文書を作成する理由もない。高市さんが、自分がそんなこと言うはずがないから怪文書だ、と主張するなら、公開することは前提とせず、政策決定過程の保存を目的とする行政文書を、捏造する必要はない。高市さんには虚偽答弁により自分の立場地位を守るというメリットはあるが、官僚側には虚偽文書を作成しても何のメリットもない。

 岸田さんはこの件に関して何も感じないのだろうか。ひとつは総務省の調査の仕方。作成者がわかっっているのだから、内容の真偽はすぐに分かる筈。それを、文書は正式なものとは認めたが、内容は確認できないとした。またも官僚側の忖度か。お粗末な国になったものだ。

 それ以上に悲惨なのは、官僚が作成した行政文書を怪文書だと認めてしまうとどうなるか。この国には一部の公文書を除いて、正式な公的文書は無くなってしまう。官僚が作成した文書が大臣や議員の一言で内容が未確認情報となってしまい、後世に残すべき文書ではなくなってしまう。

 公文書管理法施行により、行政機関での文書作成が義務付けられた。第4条において、行政機関において「経緯も含めた意思決定に至る過程」に関する文書の作成が義務づけられた。今回の文書は正にこれに該当するが、大臣とはいえ、一議員の面子により未確認情報とされてしまう。これが前例になると、時の権力者に都合の良い文書だけが残り、歪んだ形の意思決定過程が残ることになる。このままでは日本の公文書管理法はざる法になってしまう。後世に対し責任ある現在の為政者として、この危機的状況を岸田さんはどう思っているのだろうか。危機感を持っているのであろうか。国のリーダーとして情けない。もっと毅然とした態度で対処できないのか。残念なことだ。