岸田首相は何をどうしたいの?

 岸田首相の言動からは、この人が何をどうやってやろうとしているのか、全く分からない。一貫性の無さは、防衛費予算と少子化予算で顕著にみられる。

 防衛費は国民への説明や国会での議論もなく、自身の周辺だけの打ち合わせ的な会議だけで、対GDP比2%に増額する。その為に、今後5年間で45兆円増額すると閣議決定をしてしまった。勿論45兆円やGDP比倍増する中身については具体的なものは無いし、その増額分の財源についても、行財政改革には触れず、各種予算上の剰余金等を充て、増額分の4分の1程度は増税を見込むという。

 剰余金当は継続的に発生するものではなく、5年間45兆円以降の倍増する予算についても財源の当てはなく、増税国債に頼る他はないだろう。現行の国民の所得に対する社会保障費を含む租税負担率は50%近くに達し、これ以上の増税は国民生活の破壊につながりそう。そうなると国債に頼るしかなくなる。国債頼みで防衛費を賄うとなれば、太平洋戦争に突っ込んだ時と同様の財政運営となる。

 一方、岸田さんは、年初に異次元の少子化対策を打ち出し、少子化対策を含むこども関連予算の倍増の考えを示した。具体的なものは6月に作成する骨太の方針までに、予算倍増に向けた大枠を提示するという。その後国会で子供関連予算の議論が進んでいく中で、予算規模やその財源に話が及んでくると、規模ありきではない。政策の中身を詰めて、それに必要な予算を確保するということになる、と規模や財源からは逃げてしまう。

 岸田さんは、防衛費増額について、中身と規模と財源を一体で決める、との方針を掲げていたが、決めたのは増額の規模を優先させ、中身と財源は後回し。その中でも中身を優先させ、財源は最後で、未だに見通しは立っていない、という状況。

 それに対してこども関連予算は、中身が決まっていないからと、当初の異次元や倍増の掛け声はどこへやら、最近は額ありきではない。中身が決まらなければ予算規模も決まらない、と正論を吐く。この正論をなぜ防衛費の時には言わなくて今になって言い出したのか。これは財源との絡みで、規模を言ってしまうと財源に話が及ぶから、そこには触れたくない、という逃げの姿勢から出てきたものだろう。

 事前に国民への説明や国会での議論があれば、少なくとも規模優先から中身についての議論にも踏み込むことになったであろう。議論をしたくない岸田さんにとっては、国会での質疑応答は難関のようだ。岸田さんは官僚の作文答弁以外の言葉を発することができない。政策に対して、自信をもって答弁するにも、何故この政策が必要かという、その裏付けとなる根拠を自信をもって説明できないのだろう。

 理由は分からないが、防衛費増額はどんな手段でも実現したい。しかし少子化対策は、統一地方選まではやってる感を出し、統一地方選が終われば異次元などはどこへやら、適当にお茶を濁して終わらす。6月中旬過ぎれば国会も閉幕させられるし、選挙もない。何もしなくても大した影響はない。一時的な支持率低下を覚悟すれば、そのうち国民は忘れてしまうだろう、くらいに思っているのではないか。

 これからは、政治家の言動について、忘れない、ということがますます大事になってきているようだ。