岸田首相の経済対策

  岸田さんが新たな経済対策の5本柱を示し、具体策を検討するよう自民党内に指示したという。今の時期に何のための経済対策なのか。策定した経済対策の実施に必要な予算は、臨時国会補正予算を組むという。だが、その五本柱という対策の内容を見ると、この時期の物価高対策は分かるとして、その他の4本はなぜ補正予算でやるのか意味不明。持続的賃上げとか、国内投資の促進だとか、人口減少対策だとか、国土強靭化だとか、小手先の施策で何とかなるような代物ではないことは誰が見ても明らか。

  ただただ国会での議論をしたくないだけなのであろう。自民党内で規模ありきの巨額の補正予算を作るための経済対策を作り、短期の臨時国会を開きそこで補正予算を通す。議論はしたくない、支持率アップを狙ってバラマキ政策はしたい。あわよくば衆院解散総選挙も、と思っているのだろう。

  2020年度に計73兆円、21年度に36兆円、22年度に31兆円と、新型コロナの影響ではあろうが、巨額の補正予算を組むことが常態化している。そして、その中で大きな予備費を確保し、国会を通さず、巨額予算を好きなように使えることに味を占めたのだろう。今回の補正予算も、項目は並べるがその実施のための具体策はないだろうから、そこに巨額の予備費を計上し、巨額の自由裁量枠を確保する腹積もりだろう。

補正予算の編成と言っても、財源があるわけではなく、国債に頼らざるを得ない現実である。新型コロナ対策の予算は必要なくなったのだから、新型コロナ前の喫緊の課題に絞った補正予算に戻すべきだろう。

  既に会計検査院の20,21年度分の調べで、巨額の予備費が使われず繰り越されていた。会計検査院は、予備費の執行状況を公表するよう求めるとともに、予備費決定時の想定や繰り越しに至った経緯を丁寧に説明すべき、と指摘している。しかし岸田内閣は会計検査院の指摘は無視を決め込んでいる。強制力はないから聞置くだけ、という事なのだろうか。

  10月中にまとめるとみられる経済対策は、物価対策は補助金を中心としたバラ播きに、その他は具体策がないので巨額の予備費を中心とした内容不明なものになりそう。大々的に打ち上げた異次元の少子化対策は、いつの間にかどこかに行ってしまった。スローガンは立派だが、中身が伴わない耳ざわり良い言葉だけでは、第2第3の少子化対策となることが見えるようだ。

  掲げた問題は重要な政策ではあるが、1か月や2カ月で対策ができるような話ではないだろう。現在進行中の来年度の当初予算編成に組み入れ、国会で時間をかけて十分に議論をする必要がある問題だと思うが。こうした重要な政策を、自分の支持率アップに利用するために安易に持ち出してくること自体、岸田さんの政治感覚がまともではない証左ではないだろうか。

  これまでも国葬から始まって、安保3文書の改定、敵基地攻撃能力の保持、防衛費の大幅増額、原発再稼働や新増設の推進、健康保険証を廃止とマイナカードの実質義務化や使用の拡大と、日本のこれまでの歩みから大きく方向転換するような重要問題についても、ことの重要性の認識が出来ないのか、閣議決定だけで、国会での議論もなく軽い感じで決めてしまう感覚。とてもではないが、その政治感覚は一国のリーダーのものとは思えない。この国は一体どうなるのだろう。